[2021年2月号] 古文書室から



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古文書室から

                     菊池市中央図書館 図書館専門員 鷲﨑有紀

 菊池市中央図書館には古文書室という部屋があり、図書館の所蔵する古文書の収集・整理・保存のほか、展示室や「菊池デジタルアーカイブ」の管理などを行っています。古文書室の奥には利用者が入ることのできない保管庫もあり、資料を適切な温度・湿度で保管しています。

  古文書室で扱う資料は多くの方が想像するような、一点だけで歴史を動かす大発見になることは残念ながら少ないと言えます。江戸後期以降の土地・お金のやりとりを示す証文やお触れを書いた記録など、細かな内容が多く、何点もの資料が群となっています。一点だけで大発見にならなくとも複数集まり資料群となることで、菊池の昔を裏付ける大切な証拠となる可能性があります。それらを目録にし、後世の歴史研究の一助とするための地道な作業を日々行っています。

 江戸時代以降の古文書は、未発見・未整理のものも含めて大量に残っていると言われています。今回ご紹介する本『古文書返却の旅―戦後史学史の一齣』は、そうした資料を調査のため大量に収集し、しかし、整理も活用も出来ず、時間が経ってから返却を行うことになった「失敗史」と言えるでしょう。著者の網野善彦氏は著名な日本中世史の研究者です。戦後の混乱期、彼が駆け出しの研究者であった頃に参加した全国の漁村文書を収集・整理し、資料館設立を目指す壮大な計画は、資料収集の段階で打ち切りになりました。残された膨大な資料の後始末を託された著者が四十年をかけて調査・返却を行なった様子が描かれています。それぞれの資料群を整理し、資料群を通して地元の方々と交流していく姿には地域資料研究の様子がよく表われていて、「古文書」に興味がある方も、そうでない方にも興味深く楽しんでいただけると思います。

 皆さんも身の回りで古い資料の情報がありましたら、菊池市立図書館へお気軽にご相談ください。一見、古くて汚いものでも、菊池の歴史を示す貴重なものになるかもしれません。

【書誌情報】

『古文書返却の旅:戦後史学史の一齣』

網野 善彦(著)

発行:中央公論新社

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