top of page

[2024年1月号] 本の広場

「髙村薫『我らが少女A』とその挿画」        市内在住H.I

▲現役のミステリーノベルの第一人者として髙村薫の名を挙げる読書家は多いだろう。『マークスの山』にせよ『レデイ・ジョーカー』にせよ、まるで捜査班の一員になったかのような、あるいは事件の目撃者になったかのような緊張感を味わってきた。「この人、実は警察の出身者じゃないのか」と思ったのは私だけではないだろう。

▲毎日新聞連載だった『我らが少女A』も傑作だ。先述の二作品ほどセンセーショナルな事件ではない。が、登場人物各々の行動や心情が細かく描かれ、世相をみごとに反映してもい

▲この連載は挿画も工夫されていた。小説の挿画は、普通は一人が最初から最期まで担当する。ところが毎日新聞はイラストレーターを日替わりで採用した。つまり、昨日と今日で絵を描いている人が違う。さらに『少女A』の単行本とともに挿画をすべて集めて画集を出版するという企画である。この挿画集もまた味わいが深い。

▲連載、絵ともに印象に残った連載を三つ挙げる。毎日新聞・吉田修一(最初の)『横道世之介』は南川史門の絵の余白がほのぼのとして物語とマッチしていた。朝日新聞・松尾スズキ『私はテレビに出たかった』のコンビは人気漫画家の吉田戦車で、絵の持つ毒が話を盛り上げた。日経新聞・辻原登『韃靼(だったん)の馬』の絵は旭日小綬章の宇野亞喜良。東アジア各国の歴史や風俗を宇野氏も筆者同様かなり勉強されたことがうかがえる。

▲新聞を捨てずに取っておかないことには、連載で描かれた数百枚の絵は一度見て終わる。これが実に惜しい。私も絵を描く趣味があるが、一枚絵を描くことがどれだけ大変かが分かる。それだけに毎日新聞社のような試みは大歓迎だ。

▲小説が面白く、しかもそれに相ふさわしい挿画が付けば、新聞を毎朝開くのが楽しくなる。

日々忙しくしていると「昨日の新聞読んだっけ?」という時があるが、こういった読み損ねから免れることもできるのである。新聞を取っておられる方には連載小説と同時にそのイラストをご覧になることをお勧めしたい。(図書館でももちろん読めます)

▲ちなみに今、私の好きな連載は朝日新聞土曜版の『暦のしずく』である。沢木耕太郎は歴史を書いてもうまい!挿画の茂本ヒデキチのダイナミックな絵筆遣いも、この話の型破りな主人公に似つかわしい。




閲覧数:19回0件のコメント
bottom of page