本の広場
芥川賞受賞作「むらさきのスカートの女」 今村夏子著
2019年発売、同年第161回芥川賞受賞
2010年「あたらしい娘」太宰治賞
受賞以後数々の賞を受ける。
投稿 福岡 山崎和雄
めったに読まない芥川賞受賞作品「むらさきのスカートの女」を読んでみましたが、実に奇妙な本でした。
「むらさきのスカートの女」がこの物語の主人公なのですが、この「むらさきのスカートの女」を観察している「ある人物」(「ある人物」という表現は筆者の言葉)がいます。その「ある人物」が語る物語です。
「むらさきのスカートの女」が、失業中でアルバイトで食いつなぎ、公園で時間を過ごしています。「ある人物」はそれを傍らで観ていました。「むらさきのスカートの女」は、幸いホテルの従業員に雇用されます。「ある人物」もまた、そのホテルで働きます。(その経緯は一切無し)「むらさきのスカートの女」が、ホテル内部の悪習を知り、上司と不倫関係になり、トラブルから上司を怪我させ、失踪します。それをずっと傍らで観察していた「ある人物」は、「むらさきのスカートの女」に代わって、上司を脅し、(その後の経緯一切無し)「むらさきのスカートの女」がいた公園にいるという物語です。
主人公の「むらさきのスカートの女」を観察している「ある人物」は一体誰なのか?
それが最後までわからない奇妙な本です。私は、「ある人物」とは「むらさきのスカートの女」の分身で、私たち庶民の内心の願望ではないかと思いましたが、それも読む人ごとに多様な解釈ができそうです。そのわけのわからなさこそ芥川賞受賞の理由でしょうか?
コメント