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[2024年9月号] 本の広場「夜と霧」

NHKこころの時代「ブイクトール・フランクル~それでも人生には意味がある」

 

        福岡 山崎 和雄

ナチスドイツによりユダヤ人強制収容所に入所させられ、苛酷な体験をしながらも奇跡的に生還した精神科医ブイクトール・フランクルの独自の心理療法「ロゴ・セラピー」について、NHKこころの時代「ブイクトール・フランクル~それでも人生には意味がある」を聞いて、その内容を始めて知りました。(放送4月~9月毎月第3日曜午前5時~6時 再放送同週土曜午後1時~2時)

1933年ドイツでナチスが政権をとって以降、ユダヤ人迫害(民族浄化)が始まり、ユダヤ人は全て収容所に送られ、重労働を課せられ、それに耐えられない病弱者、老人、子どもは、全てガス室等で殺され、死体は焼却されたのです。

 なお、収容所に送られたのは、ユダヤ人だけではなく、ロシア人捕虜、占領国のナチス抵抗者、フランスレジスタンスなどの人々が多数含まれています。アウシュビッツ以外にも、多くの収容所があり1千200万人以上が殺されますが、ドイツが敗北して、奇跡的に生き残ったひとりがフランクルです。

 フランクルは、精神科医で、ユダヤ人専用の精神科病院に勤務していました。その病院には、ユダヤ人迫害に絶望し自殺未遂の患者が多く運ばれてきましたが、フランクルはその患者たちに、「今はまだわからないけども、人生にはきっと何か意味がある。人生はそれまできっとあなたのことを待っている。だから苦しくともそこから逃げてはいけない」と諭しました。

 この言葉には、ロゴセラピーの信条が現れています。ロゴセラピーは心理療法です。従来の心理学が想定する人間の要素は、「心理」と「身体」のふたつですが、フランクルは「精神」という第三の次元を加え、ロゴセラピーの基軸に据えました。

 身体的な病気であれ、心理的な病気であれ、病気を治す自己治癒力を発揮するのは

「精神」だというのが、フランクルの基本的な考え方です。

 フランクルも、ユダヤ人ということで、強制収容所に囚人として、父、妻、子どもとともに、アウシュビッツに送られます。

 アウシュビッツでは、小さな一切れのパンと殆ど実のない味の薄いスープ1杯が日に 一度支給されるだけです。重労働の末、床に重なりあって横になるだけ、糞尿は床を汚し、手足は凍傷で治療はなく、働くことができない者は即ガス室送りです。

 このような地獄に、収容者は生きる希望を失くし、精神に異常をきたす者があとを断ちません。フランクルはそのような収容者に、「あなたには生きる意味がある」と諭します。

 フランクルは「自分は生かされている。その意味は何か今はわからないが、生きることに意味がある。精神の自由は、誰にも侵されることはない。精神の自由は肉体の苦痛に耐える力を与える。人間は愛する人間の精神的な像を想像して、自らを充たすことができる。

苦しい日常のなかであっても、ユーモア、自然を愛する心 、芸術を愛する心が、一瞬でもあることが、私たちの精神を支えてくれる」と言います。

 フランクルは、解放後、この体験をもとに「ロゴセラピー」として精神医療に大きな一石を投じ、収容所体験を「夜と霧」として著しました。

 

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