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[2025年7月号] 投稿「本と暮らすまちへ」

本と暮らすまちへ ~ 菊池に引っ越して感じたこと~       松尾 彩音


 私たち家族は、2年前に熊本県の菊池市に引っ越してきました。それまで仕事の都合で大津町に住んでいたのですが、1年ほど暮らす中で、「毎日の暮らしそのものが楽しいと感じられる場所に住みたい」と思うようになりました。そんな思いから選んだのが、菊池でした。


 実際に暮らしてみて、菊池には、歩いて回れるちょうどいい規模の中心街、個性的で居心地のよいカフェやお店、そして市民の方々が主催するあたたかなイベントがあって、人と人とのつながりが自然と生まれる空気があることに気づきました。

 

 そうした魅力のひとつとして、私たちが大切にしているのが「図書館のある暮らし」です。

 私たちは本を読むのが好きで、そのときに身を置く空間や雰囲気も、とても大事にしています。菊池中央図書館には、興味を引かれる本が多くそろっているのはもちろんのこと、視線が交差しにくいよう配慮された座席配置や、落ち着いた雰囲気が整っていて、ゆっくりと本に向き合える時間が流れています。静かに本を読むという体験の豊かさを、あらためて感じさせてくれる場所です。

 

 図書館という場所は、完成して終わりではなく、地域の人びとが関わり続けることで育っていく「生きた場」なのだと、ここに来て強く感じました。今の菊池の図書館が、ここまで魅力的な場所になっているのは、日々の利用を支え、よりよい場をつくろうと活動を続けておられる図書館職員や「友の会」のみなさんの存在があってこそだと思います。


 菊池中央図書館の中には、子ども図書館があります。

ここでは、小さな子どもたちが絵本の読み聞かせに耳をすまし、英語のお話し会で新しいことばに出あい、時には遊びながら物語の世界を広げていきます。親子で訪れる時間が、自然と学びや喜びに変わる、そんな空間です。


 そして、旭志・泗水・七城の各図書館にも、それぞれの地域らしい風景があります。

あるときは読み聞かせ、あるときは朗読会。音楽が響いたり、笑い声が広がったり。どの館にも共通して感じるのは、職員の方々の「この場所をもっとよくしたい」という静かな情熱と、そこに集う人たちのあたたかな空気です。


 本を読むだけではなく、人と出会い、地域とつながる。

そんな時間が、図書館という場を通して、日常の中に自然に生まれていることに、私たちは何度も心を動かされてきました。


 図書館に通う中で、「こみんなのんな催しがあるんだ」と知るきっかけになったのが、館内で手にした情報誌『みんなの図書館」』でした。

図書館友の会が発行しているこの冊子やホームページでは、各図書館で行われているさまざまなイベントが丁寧に紹介されています。


 また友の会が開いている「寄合カフェ」では、地域で活動している方の話しを聞いたり、菊池の文化にふれるひとときもあります。

こうした場があることで、図書館が「本を読む場所」だけでなく、「人と出会い、まちとつながる場所」として、私たちの暮らしの中に根づいていくのだと感じます。


 特別なことではないけれど、誰かが手を動かし続けているからこそ、私たちは今日も気持ちよくこの場所に通えるのだと思います。

 

 本と出会い、人と出会い、自分と向き合う。そんな豊かな時間を、私たちはこのまちの

図書館で過ごしています。

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