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[2022年07月号] 古典への誘い 「平家物語」

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の原点「平家物語」を読む


NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が放映されています。

 そこで思い浮かぶのは、私たちが高校時代に国語(古文)で習った「平家物語」のあの著名な冒頭の一節です。

《祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす》

 軍記物の筆頭に掲げられる「平家物語」は、書物としてより以上に、琵琶法師によって語り継がれました。

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、必ずしも「平家物語」をそのまま脚本化しているものではありませんが、ストーリーとしては、清盛政権の内紛「鹿谷(ししのたに)事件」のあと、清盛栄華の絶頂の頃に起きた「以仁王(もちひとおう)」の平家打倒の令旨(りょうじ)」から始まっています。平家打倒のよびかけは、関西、関東の源氏の武将たちに伝えられ、その中に「流人の前右兵衛佐(さきのうひょうえのすけ)頼朝」の名が記されています。

 大河ドラマでは、義経が頼朝に対面する場面や義仲が平家を打ち破り、都落ちさせる場面、義経が義仲を破って、京を抑え、勢いを盛り返してきた平家を、一の谷に破り(鵯越え)、壇浦で、平家を壊滅させます。その義経も、頼朝に追われ、奥州平泉で討たれますが、この一連のストーリーは、ほぼ「平家物語」の筋書どおりです。

 なお、「平家物語」は、平家滅亡で終わりますが、大河ドラマの舞台は、北条氏を描く「吾妻鏡」のストーリーに移っています。「吾妻鏡」のどこで終わるのかは、制作者の胸の内です。

 ところで、古典としての「平家物語」をお薦めするのは、軍記物としての面白さだけではありません。冒頭の一節で紹介したように、まずは、リズミカルな名文です。目が見えない琵琶法師が耳だけで聞いて、正確に伝承することができたのは、このリズミカルな名文の故だと思います。

 その名文の中に織り込まれているのが、「登場人物の一人一人が、普通の人間の弱さ・悩み・葛藤、死の恐怖、殺生への罪悪感、死後の世界への恐れを語り、あるいは体現しているからです。時代が変わっても状況が変わっても、等身大の呻き声は私たちの心を震わせます。」という人間描写です。(駒沢大学 櫻井陽子 日本の古典を読む「平家物語」解説より抜粋)これが古典の古典たる由縁であり、現代に生きる私たちへの先人からの贈り物だと思います。

《おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の   前の塵に同じ》

 「方丈記」「徒然草」も同時代の古典です。今の時代に通じるものを感じます。

                               井藤和俊 

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