[2019/10月号]わたしのおすすめの本「稲垣栄洋 著『雑草が教えてくれた日本文化史』」

最終更新: 2019年10月1日

 今年の夏も猛暑が続く中、「この間草取りしたのに、こんなにまた草(雑草)が生えてきた」とこんな声をあげられた方も多いのではありませんか?不思議に思われるかもしれませんが、そんな雑草を研究する「雑草学」という分野があります。日本および世界中でも多くの研究者が「雑草」の研究に没頭しており、著者はその中の代表的な1人です。

 庭や田畑を維持するうえで、雑草は厄介な存在であると思っている人が多いと思います。しかし、現実とは異なり、日本人は雑草、特にその生きざまに好感を持っている人が多いのではないでしょうか。「あなたは温室育ちですね」と言われて怒る人はいるかもしれませんが、「あなたは雑草のようにたくましいですね」と言われると褒められたような気になる人は多いと思います。その代表的な言葉が「雑草魂」であり、寄せ書き等で「雑草のように強く生きたい」と書いた人も多いのではないでしょうか。

 日本にはそれぞれの家に家紋があり、ヨーロッパには紋章があります。ヨーロッパの紋章には、ワシ、ドラゴン、ライオン等が使われ、強そうな生物がモチーフとなっている場合が多く見受けられます。しかし、日本の家紋には植物をモチーフにしたものが多く、皇室紋章の「キク」、徳川家の「三つ葉葵」はよく知られているものです。日本五大紋の一つに「かたばみ紋」と呼ばれるものがありますが、ハートを三つ組み合わせたようなデザインで、均整のとれた美しい家紋です。「かたばみ紋」のモチーフとなったカタバミは、草取りをしても、種子をまき散らして増えていく厄介な雑草です。家の格を重んじ、血縁を大切にした戦国武将が、なぜ家のシンボルとしての家紋に雑草である「カタバミ」を選んだのでしょうか。戦国武将は、小さな雑草でありながら抜かれても抜かれても、しぶとく種を残して広がっていくこの雑草に、家の存続と子孫繁栄の願いを重ねたのではないでしょうか。このように「雑草」を通して、新しい日本人論を読み解くことができる1冊です。 


紹介者 村田達郎  

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