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[2021年4月号] 本の広場「文屋の親子」

「文屋の親子」百人一首                  秋吉 栄美子


◆数年前、人気漫画「ちはやふる」が広瀬すず主演で映画化され、百人一首の競技かるたに情熱をかける青春映画が話題となりました。この時、興味はありましたが観る機会はありませんでした。

その後、ひょんなことから百人一首かるたが手に入ったことから、脳活にと思い、七十路(ななそじ)を前にして、「1年ががりで百人一首を暗記する」との目標を掲げました。4日弱で一首クリアを基準にして、何とかいけるだろうと甘く見積もってしまいましたが、4月にさしかかり、ただ今苦戦しております。(笑)


◆まず、意味も、作者もわからないまま、とにかく100首通して読んで好きな歌を選んでみました。それは、37首の「白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける」という句です。草の葉の上に乗った白露に、風がしきりに吹きつける秋の野では、しっかりと糸を通していない真珠の玉が、あたり一面に散っていくようだなあ、と言う秋の情景を詠んだものでした。


◆百人一首は万葉の時代から鎌倉時代までの600年間にわたる歌人たちの歌が藤原定家によって選ばれています。歌集の中には、恋の歌が43句、四季の歌32句、別離1句 旅4句 その他20句が納められていますが、令和の私たちから見ると、平安の人々は恋愛にかなり大胆で積極的。私たちがスマホで「ハートマークをつけて、送信~」とするところを、平安の人々は「香のかおりする和紙に歌を書き、梅の花を添えて求愛・・・」と風情がありますよね


◆さて、こうして少しずつ訳を解きながら勉強の途中ですが、あらためて100首から好きな歌を選んでみました。それは第22首の「吹くからに 秋の草木の しおるれば むべ山風を 嵐というらむ」(吹きおろすとすぐに 秋の草木がしおれてしまうので、なるほどそれで山からの風を嵐と言うのだろう)という句です。作者は文屋の康秀。私はなんとも自由でのびのびとして、リズミカルでダジャレっぽい歌が好きなのです。


◆そして、百人一首入門時に選んだ「白露に~」の句は文屋の朝康の作。なんと、朝康は康秀の息子で、偶然にも文屋の親子の歌を好きな歌にランキングしていたのです。彼ら親子は下級役人でしたが、親子共に、秋の情景が好きで、自由に歌を詠んで楽しみました。彼らの性格に、何となく私も似ているようで、共感を得たのは必然だったのかも、などと妙に親近感が湧いて、思わずほくそ笑みました。


◆百人一首は「かるた競技」や「坊主めくり」「源平合戦」のようなゲームだけではなく、勉強していくうちに、自分なりのあらたな発見にきっと出会うと思います。古人に思いを馳せ、日々わくわくしながら、親しんでいきたいと思っています。



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