[2022年4月号] 書評「コスパ病」

書評「コスパ病」~貿易の現場から見えてきた「無視されてきた事実」~ 小島尚貴 著                 

                              田中教之

 


 熊本県南の貿易アドバイザーとして活躍されている小島尚貴氏は、私がクレソンの生産販売を初めてからしばらくしてお会いし、6年くらいのお付き合いをさせて頂いている。福岡に住み、九州の多くの企業や一次産業生産者から、海外に売り込む仕事をなさっており、今回、日本の病の原因を鋭く指摘する書籍を発行されるということで、拝読した。

 日本人が「コスパ(コストパフォーマンス;いわゆる買い物上のお得感)」に浮かれていることについて、私が以前中国上海で日本食レストランの運営する会社で、経験したことも本書に書かれており、貿易の現場を知る小島氏の鋭い指摘は、地方の衰退を赤裸々にするもので、大変ショックな文章だが、日本人、特に九州人への愛を感じる内容でまとめられている。

 ウクライナショックによって、日本の食料の海外依存の影響による物価高は、地方の食卓へも確実に影響している。燃料や資材高騰は生産者の経営を圧迫しており、国産の野菜も値上がりせざるを得ない状況である。

 なぜ、日本は中国を中心に、食料や伝統工芸品までも外国からの輸入に頼ることになったのか。小島氏はい草の産地破壊が、日本人のい草業者によるものだと指摘する。すなわち、日本の持続的な発展を阻害する短期的な利益のために、中国などに生産拠点を移し、更に高性能の機械も移動し、技術移転することで、国産の半額以下のい草を日本に輸入したということである。

 このような輸入体系を開発輸入などとは異なる、「自損型輸入」と小島氏は定義づけする。行き過ぎたコスパ病の原因について、中国産が悪いという考えがあるが、結局は日本人同士の格安競争の結果が、日本の地方の生産地を衰退させている。

 九州にはねぎの産地が多いにもかかわらず、地元の人は中国産の安い冷凍ねぎを購入している。コスパ病は、消費者である私たちの問題である。安いものを買いたい消費者がいると、安く売ろうとする業者(スーパーなど)が増える。そうすると、外国で安く生産しようとする生産者が増え地方の産地が衰退する、という負のスパイラルをどう解決していくかが課題である。

 小島氏は、「地産地消」はほぼ全てを癒す、と導いている。コロナ禍、災害、戦争が起きているこの時代だからこそ、となりの農家さんが作ったお米を米粉にして、パンや麺を作ってみたいものである。例えば、小麦が無ければ、地元産の米粉を、という考え方が広まれば、地産地消が少しでも進むかもしれない。

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