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[2023年11月号] 古典への誘い「竹取物語」

 古典への誘い「竹取物語」            井藤和俊

             

               月に帰る姫

「竹取物語」とは?

幼いこどもたちが親から聞いた「むかしばなし」のひとつ。「竹取物語」

おじいさんが、光っている竹を切ると、手の平に乗るような小さな女の子が、竹から現れたので、子どものいないお爺さん夫婦が育てるというお話です。

 これは「桃太郎」や「一寸法師」などの「おとぎばなし」のひとつとして、親から子へと語り継がれてきた物語です。その続きも、誰もが聞いて知っている話しです。

 その小さな女の子は、成長して美しい姫となり、五人の貴族の若者が求婚します。

五人の若者はそれぞれに与えられた難題に挑戦しますが、いずれも失敗します。

 噂を聞いた帝からも、一目みたいと、呼び寄せられますが、姫は使いの者にも会おうともしません。満月の夜、姫は月に帰らねばならぬと聞いた帝は、姫を守るため兵を出しますが、姫は月に帰ってゆきます。このようなお話しす。

 口承説話由来の「竹取物語」

 文学者の間では、この「竹取物語」の「おとぎばなし」は、いくつかの伝承が組み合わされてできた物語として考えられています。

 竹から女の子が生まれるという話(「竹中出生説話」)は中国南部、東南アジアに多く見られ,「竹取物語」は、中国四川省のチベットの民話と、結論を除けば、ほぼそっくりと指摘されています。

求婚者に難題を課して結婚の可否を決めるという「難題求婚説話」は、今昔物語にも取り上げられています。

 天女が下界におりて、女人として、女房になるが、男が約束を破って、天女が去ってゆくという天人女房説話も、「鶴の恩返し」のように、類似の説話があります。

「口承」は、祖先の「伝言」?

 このように、「竹取物語」は、それ以前の口承説話が、平安朝の漢字文化から平仮名文化への過渡期に、「物語」として、書として成立したように思われます。

 千年を経た現代でも、「竹取物語」やその他のお伽噺しが、いまでも親から子へ語り継がれるのは、そのルーツが「口承」文学に由来しているからではないかと思います。

 「口承」は、当時の庶民の生命観、自然観が投影されていて興味深く、私は「口承」は、祖先からの伝言ではないかと、楽しく夢想しています。

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