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[2025年06月号]本の紹介「蔦屋重三郎と江戸期の出版界」

更新日:4 日前


葛飾北斎の「冨岳三十六景」
葛飾北斎の「冨岳三十六景」

 今NHKテレビ大河ドラマ「べらぼう」が放映されていますが、このドラマで交わされている当時の江戸の出版業界の言葉、「地本問屋」とか「黄本」「赤本」「細見」とかの言葉が、最初何を意味しているのか、わかりませんでした。

 先月まで「図書館の日本史」を調べていた私としては、図書館とは別に、庶民に流通していた書籍、読書文化とはどんなものだったのか、興味が湧いてきました。

 以下、当時の出版業界の仕組みについて、書店に並んでいるNHK大河ドラマ「べらぼう」関連の出版物によって、調べてみました。

※出典 べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 蔦屋重三郎とその時代 宝島社出版


 江戸時代、蔦屋が活躍する江戸中期まで、本の出版は、上方・京都が中心でした。従って上方・京で出版される「本問屋」、江戸で出版される本は地元とう意味で「地本問屋」と呼ばれました。

 本は、庶民には高価だったので、庶民向けには「貸本屋」が沢山あって、庶民の読書欲を充たしていました。本書では、蔦屋重三郎が主人公ですので、「吉原」が舞台です。

 当時、本はどのような物が読まれていたのか、誰が作っていたのか 当時の出版業界の「言葉」の意味を、表記の本から、抜き書きしてみました。


江戸時代の主な出版物 (P34~P35)

版元とは、本の版を所有する事業者・事業所のこと。現代の出版社。

草紙とは、日用、娯楽のための書籍。思想や学術の書籍は「書物」と言う。

地本問屋とは、江戸で出版された大衆本のこと。それを企画、制作して販売した問屋

書物問屋とは、宗教書、儒学、漢学、歴史書、辞書、医書など専門書を扱う問屋

仮名草紙とは、婦人、子ども向けの仮名主体で書かれた小説。

浮世草紙とは、大人向けの小説

往来物とは、寺子屋や家で使われた学習書、実用書。「農業往来」「商売往来」

細見(さいけん)とは、地図付きの案内本。「吉原細見」

浮世絵とは、江戸時代の文化や風俗を描いた絵画の一種。

      筆で直に描いた一点物の絵は、肉筆画。印刷されたものは「木版画」

錦絵とは、明和年間以降に流行した、多色で刷られた木版画の総称。風俗や女性などが描かれている。


「べらぼう」でよく登場する本の種類を知っておくとあらすじがよくわかります。


草双子のジャンル(P61)

     赤本  「桃太郎」や「花咲か爺さん」などの童話が中心

     黒本  恋愛、歴史もの、歌舞伎など芝居のあらすじなど

     青本  恋愛、遊郭、滑稽など

     黄表紙 当時の世相や風俗、事件などを、風刺や洒落を利かせながら写実的に

         書いたもの。草双紙=子供向けのイメージを一新した。

     合本  黄表紙の内容の複雑化・長期化に対応するため、黄表紙3~4冊分を

         1冊に綴じた本

     

 私たちがよく聞いているこの時代のほとんどの有名な浮世絵師は、蔦屋重三郎が、引き

立てた絵師です。

その浮世絵師の名前と作品を紹介します。


蔦屋重三郎と浮世絵師(出典 Pen Books 「蔦屋重三郎とその時代」“蔦屋重三郎が見出した天才たち“(P58~P112)

     北尾政演(山東京伝)「吉原傾城 新美人合自筆鏡」「箱入娘面屋人魚」

     北尾重政 勝川春章 共著「青楼美人合姿鏡」

     北尾政美 恋川春町 共著「鸚鵡返文武二道」

     恋川春町「吉原大通絵」「金金先生栄花夢」

     喜多川歌麿 「婦人相學十軆 浮気之相」「婦女人相十品 ポッピンを吹く女」

     東洲斎写楽 大谷鬼次の役者絵「江戸兵衛」市川蝦蔵の役者絵「竹村定之進」

     朋誠堂喜三二「文武二道万石通」「娼妃地理記」

     大田南畝 狂歌師「通詩選諺解」「狂歌浜のきさご」

     葛飾北斎 「東都名所一覧」「画本東都遊」

 

 いかがでしょうか?このような江戸中期の出版業界の特有の言葉や人物名、その作品を多少とも知っていると、NHK大河ドラマがより面白くなるのではありませんか?

そして、「活字と絵」が融合することで、読書人口と識字率も、大幅にアップし、かつ地方へその文化が伝搬しました。それが、地方の農民の知的水準を底上げし、幕末の尊王攘夷の土壌となり、明治維新につながりました。

 文化の力は、書物、読書の力は、一見迂遠に見えますが、その力が庶民にまで及ぶ時、世の中を変える力を発揮するものです。


歌麿の美人画
歌麿の美人画

 
 
 

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