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[2020年10月号] 「読書サロン」文学にみるコロナ 


読書サロン 文学にみるコロナ

 今世界中を席巻している新型コロナウイルスは、収束の見込みはたっていません。このような世界中にまたがる感染病の流行を「パンデミック」と言いますが、歴史上このようなパンデミックは幾たびも繰り返されてきました。その中から文学作品が生まれてきました。

デフォーの「ペストの記憶」カミユの「ペスト」、日本では小松左京の「復活の日」などが著名な作品です。

 今読んでみると、ペストの感染拡大と社会的混乱が、そっくりそのまま、ペストをコロナに置き換えて、繰り返されているということに、驚きます。「復活の日」の細菌兵器「MM菌」も、正体不明で治療法のない病原菌で全世界の人類は死滅するということでは「ペスト」同様です。

 感染防止策は、感染者隔離と交通交流遮断、密接な接触回避のみです。政府はなすすべなく、軍隊で町を包囲し、人や物流を遮断するだけです。診療所病院はあふれる患者で機能はマヒし、医薬品も食糧も途絶え、死者を葬る場もなく、街全体が廃墟と化します。

 このストーリーは全作品共通です。ペスト菌は感染拡大によって生じた免疫によって自然消滅します。(注 ペスト菌発見 1894年 北里柴三郎 熊本県小国町出身)

MM菌は、(フイクションですが)ミサイルの中性子によって消滅し、南極に生き残っていた人々が生き残る(復活する)というストーリーです。

 包囲され、一切の交流物流を遮断された街に閉じ込められた人々の恐怖と絶望、自暴自棄、発狂、犯罪行為などは、今回のコロナ禍で休業要請、自宅待機された人々の不安と不満、攻撃的言動と、根は同一です。ただし、テレビ、新聞、インターネットと他種多様な情報が流通していたことが、人々の混乱を自制させることにつながったものと思われます。

 ペストの流行は、中世のキリスト教の支配的な地位を揺るがし、ルネッサンスの源になったと言われています。

 今回のコロナもまた、今の世界の文化的価値や生活様式、ひいては産業構造、政治の在り方をも揺るがす源になるかもしれません。またコロナ禍の人間を描き、未来を照らす文学が生まれるに違いありません。                   (文責 井藤和俊)

読書サロン キクロス(中央公民館)毎月第三木曜 午前10時~12時 

参加自由 連絡先 井藤和俊 ☎090-4775-1929

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