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[2026年11月号]書評 『バラバラな世界で共に生きる リチャード・ローティの哲学』朱喜哲 著

8 分前
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『バラバラな世界で共に生きる リチャード・ローティの哲学』

朱喜哲 著/NHK出版新書/2026年


「話し合えば、きっと分かり合える」。私たちはそう信じたい。しかし、どれほど言葉を尽くしても分かり合えない相手はいる。政治的な対立から日常の人間関係まで、互いの「正しさ」がぶつかり合う現代社会において、私たちはどうすれば共に生きていけるのだろうか。


本書は、アメリカの哲学者リチャード・ローティの思想を手がかりに、この難問に向き合う一冊である。


とりわけ印象的なのは、公共的な空間を「バザール」、私的な空間を「クラブ」にたとえる議論だ。バザールには、価値観も立場も異なる人々が集まる。互いに気を遣い、時には不快な思いをしながらも、共存するための作法が求められる。一方、気心の知れた仲間が集まるクラブでは、安心して本音を語ることができる。しかし、その居心地のよさは、異なる考えをもつ人々への不寛容を生み出す危険もはらんでいる。


ローティが重視するのは、誰もが納得する唯一の正しさを発見することではない。自分の信じる正しさもまた偶然の歴史や経験によって形づくられたものだと自覚し、他者への想像力を働かせながら、共に生きるための言葉を探し続けることだ。


もちろん、分かり合えない相手と会話を続けることは容易ではない。そもそも、会話さえ拒む相手とどう向き合えばよいのかという疑問も残る。それでも本書は、意見の一致を共生の条件としない、新しい希望を示してくれる。


図書館には、異なる時代、異なる文化、異なる思想をもつ人々の言葉が、一つの場所に並んでいる。自分とはまったく異なる考えに出会い、ときには自分の正しさが揺さぶられる。それもまた、読書の大きな魅力ではないだろうか。


分かり合うことを急がず、違いを抱えたまま共に生きる。そのための知恵を、本書は私たちに問いかけている。

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